ほとんどのメーカーは様々なものを製造・販売していると思います。製品は少なくても仕様がいくつもあったりオプション機能があったりすると思います。大きさだけでなく機能、価格など販売する顧客のニーズに合わせるために必要なことだと思います。そのような顧客のニーズに合わせて様々なラインナップを用意するのが一般的です。
一方で、工場としては同じものを作り続けた方が効率が良いのも事実です。多くの種類を販売するためにはその分の設計、製造の必要がありますし、在庫の種類も多くなります。特定の製品に需要が偏って、需要が少ない製品の在庫を抱え続けるといったリスクもあるかもしれません。
部品の共通化
部品の種類をなるべく増やさず、製品の種類を増やすため、部品の共通化を図ることがあります。製品の重要部、核となる部品を一つ、ないし少ない種類の共通のものにし、それに取り付ける部品を変えることで製品の種類を増やすというものです。特定の部品を共通化する部品の共通化は主に製造、管理のコストを下げるために行われます。
受注生産のような形態でも、すべての顧客の要求にこたえるため、毎回一から設計し直していては時間もコストもかかってしまい非効率です。そのため重要な部分、製品の核となる部分はあらかじめ設計しておき、汎用性を持った構造として設計しておきます。
複数製品で共通部品を使うわけですから製品単体、部品単体の部分最適ではなく、製品ラインナップ、会社の方針全体にもかかわる全体最適の考え方が必要です。製造している製品それぞれのメリット、デメリットがあるので、どこを共通化するか、本当に共通化した方がよいのかは単体で見るのではなく、製造している製品全体、ビジネス全体として検討することが必要です。


図の例だとX、Y、Zの3つの製品に対して、中核となる機能を持つa-1、a-2、a-3の部品をA-1に共通化、部品b-2、b-3をB-3に共通化してX、Y、Zの製品を作っています。こうすることで、3つの製品をラインナップするのに必要な部品数を9種類から6種類に減らすことができます。このよう共通化することで部品の種類を減らすことができ、様々な効果を得られます。
共通化のメリット
- 設計を使いまわせる
核となる部分、機能を有する部分を共通化しておくことで、性能向上などの変更があった場合に、共通部分の設計をするだけで製品群全体を変更することができます。また、製品ラインナップを増やす場合、核部分を流用すれば新たに設計しなおす必要がないため、容易にラインナップを増やしたり、顧客要望に応えやすくなります。
- 製造設備投資を減らせる
部品を共通化することで、製造設備や治具などの種類を減らすことができます。共通化する前よりも工数は増えるかもしれませんが、製品群全体としてみれば、設備は少なくて済みます。 - 在庫の種類を減らせる
部品の種類が多くなればなるほど子部品、孫部品と増えていき、リードタイムがかさみます。生産時期を逃さないために、ある程度部品の在庫を持つことは一般的です。しかし製品の数だけ孫部品の種類があれば多くの部品の在庫を抱え続けることになります。しかし、部品を共通化しておけばその部品の在庫を持っていればその分の製品の孫部品を持っていることになります。また、敢えて需要の少ない製品の構成部品をほかの製品と共通化し在庫を持っておくことで、その製品の突発的な需要増などにも応えやすくなります。
このように製品の核となる部品、製造コストのかかる部品などを共通化することで、様々なメリットが生まれます。
デメリット
- 共通部品単品では不要な部分が発生する
共通部品A-1には製品Xでは使用されない機能や部分が含まれる可能性があります。オプション機能を取り付けるためにすべての製品に取付用のネジ穴が付いているなど、一見すると無駄に思える部分が発生します。 - 製品が大型化する可能性がある
すべての部品を専用設計にした場合に比べて一つ一つの部品が大型化、必然的に製品も大きくなる可能性があります。A-1には単純なa-1よりも部品の大きさが大きくなる可能性があります。それによって、主要製品の訴求力が落ちたりする可能性もあるため、 - 設計が複雑になる
共通部品が対応しなければいけない部品が増えて複雑な形状になりがちです。形状が複雑になることで設計の手間や加工費が増えたり、無駄な不具合が生まれる可能性もあります。 - 拡張性が低くなる、アイディアが生まれにくくなる
新しい製品を生む際に共通部品A-1の機能、形状にとらわれて新しい製品の開発の障害となることがあります。多くの製品ラインナップに核となる部品が対応することにとらわれて、その部品の性能向上が止まってしまう可能性もあります。
需要のない製品に合わせて部品を共通化したことで、部品のコストが上がり、主力製品のコストまであがるといったことにつながります。
まとめ
部品を共通化することには多くのメリットがありますが、場合によってはそれが足枷となることもあります。このようなメリット、デメリットは必ず生まれるものではないので、生産性、販売戦略など多くのことを考慮して共通化を行う必要があるでしょう。こういった共通化に限らず、製品の設計は幅広い視点で進めていくことが求められます。